「……はい。これでどう?」
紫野さんが三面鏡を使って、後ろ髪を確認させてくれた。
やっぱり美容師を目指すだけあって、紫野さんの腕は確かだ。
「紫野さん流石です!ありがとうございました!」
後は私が片付けますから、と紫野さんに言ったら、充さんがベッドから起き上がった。
「先に飯食いに行かねぇと、食堂閉められるぞ」
言われて時計を見れば、もう7時半。食堂を利用できるのは8時までだったっけ?
「ご飯食べたら片付けます。紫野さん、本当にありがとうございました」
いつもの瓶底眼鏡を着用して、紫野さんには深々と頭を下げた。
「何で?こっちが紗凪ちゃんにお願いしたんだから、当たり前でしょ?他の寮生達を誘惑してってね」
「だから、それは嫌ですったら」
「お前その瓶底どうにかなんねぇの?」
「必須アイテムなんで、これは外したくありません」
私の部屋からガヤガヤと3人で食堂へ向かう。
「そういやお前は風呂どうしてんの?」
充さんが食堂の扉を開けながら私に聞いた。
「管理棟にも一つ、小さいお風呂があるんです。それを使ってますけど……」
「ふーん」
食堂の中に居たのは私達だけでは無くて、今日はあんまり見かけなかった赤間君と秦野君が、向かい合って夕食を食べていた。


