秦野君に借りた本をテーブルの脇に寄せて、一人で黙々と食べることに専念していると、一さんが目敏くその本を見つけて手に取った。



「太宰の『女生徒』か……。紗凪ちゃんはこういう系統の本が好きなの?」


いや、あんまり好きじゃないですけど。


所詮文豪と呼ばれる人達の小説は変に小難しくて分かりにくいです……。って言ったら、子供っぽい言い訳かな?


「それは秦野君に借りたんです。秦野君が太宰治が好きだから、是非読んでみてって」



一さんは苦笑して、「天らしいチョイスだね」と、漏らした。



うん、なんか世の中の女子学生はみんな純真無垢なまま穢れなんて知らなくて当然じゃん、みたいな雰囲気だったから、意味分かんなかったです。って言うのがこの本の感想だ。



「うーん…。俺なら、今の紗凪ちゃんには是非この詩を読んでみて欲しいけどな」


一さんはそう言って、小脇に抱えた本の中から一枚の紙を取って私に差し出した。



「有名な詩の英訳だよ」