彼の特徴をあげるのならば金髪にスッと通った鼻筋、深い藍色の瞳が印象的。

長身で優雅な身のこなしは社交界でもてはやされているのも頷けた。

彼と出会ったのはパーティ。
地味な私がまさか彼に声を掛けられるなんて思いもせず驚きを隠せなかった。

そこから付き合いが始まって婚約をするまでに至ったわけです。


私は昼下がりにマントルピースの前の一人掛けウィングチェアに座り読書をしていた。

そこへ来客中のステファン・グレゴリーは後ろからティアラを抱きしめた。

『ティア。せっかく僕がいるのに本に夢中?』

拗ねたような事を言ってもどこか自信ありげな彼はティアラの本を取り上げた。

『あっ。ちょっと。返して下さらない?』

私は慌てて本を取り戻そうとステファン・グレゴリーの腕を振り払い立ち上がる


ステファンは私の手を上手に避けながら本をめくった。

『む。これは、、、掃除の本、、、?』


私は奪い取るのを諦めると両手を腰に当ててそうよ。と言った。

『何か問題がありますこと?』

そうティアラが言うとステファン・グレゴリーは眉をよせた。

『君が掃除?ハウスキーパーになる夢があったなんて知らなかったよ。』

肩を竦めると冗談混じりに揶揄した。

ティアラはムッとしてすかさず言い返す。

『不勉強な人ね。それではきっとハウスキーパーを雇っても上手くいかないわ。』

『私はそういう時にも役立つと思って本を読んでいてよ。』

ステファンはうーんと少し考える風に装うと言った。

『それなら、、、フェニシングスクールに行ってみたらいいんじゃないかな。』

ティアラは真面目くさった顔でそう言われ少し面喰らった。

『フっフェニシングスクール?』

ティアラの素っ頓狂な声にうん。とステファンは頷いた。

『花嫁修行をする学校さ。』


ティアラはこれは大変な事になったと焦った。

まさかそこまでしなくても、、、と言い掛けてティアラは止めた。

そんな事を言っては本を読んでいる事自体の意味がなくなってしまう。

ティアラは悔し紛れに焦りと苛つきを噛み砕く。

『私、始めからそうしたいと思っていてよ。』

自分で言って少し後悔しながらティアラはリビングを後にした。

ステファン・グレゴリーの笑いを噛み殺す声はきっと気の所為では無いはずだ。