渚を起こし、3人で司の作ったベーコンエッグとトーストの朝食を摂った。
「藤沢駅まで車で送るよ。
どうせ途中だから」
大磯で釣りをするいう司は、パンに噛り付きながら言った。
渚は真彩たちが帰ってしまうので、拗ねていたけれど、司が釣りの支度を始めるとすぐに嬉しそうな笑顔が戻った。
車の中では、理亜を前抱っこした真彩が二列目の真ん中に座った。
すると、「理亜ちゃんと一緒がいい!」渚がシートベルトをしゅるっと外し、助手席から真彩の隣に移動してきた。
「パパ!音楽!
理亜ちゃんに歌ってあげるの!」
車が走り出すと、渚は父親の司にカーステレオのCDを掛けてくれるようにせがみ、渚のワンマンショウが始まった。
キラキラ星、森のクマさん、七夕……
渚は次々にかかる童謡に合わせ、元気に歌ってみせる。
真彩も理亜の背中をとんとんと軽く指で叩き、拍子を取るようにする。
「渚、将来、安室ちゃんみたいな歌手になりたいんだって。
ライブビデオ見せたら、すっかりファンになっちゃってさあ」
信号待ちで、司が振り返り笑顔で言った。
「へえ~すごいじゃない!きっとなれるよ、渚ちゃん、可愛いもん!」
真彩が感心してみせると、エヘッと渚は少し照れたような表情をした。
その様子がとても愛らしかった。