そうして。
井坂さんの住んでいる部屋で、私はびっくりして立っていた。

めっちゃきれいで、広い部屋。

「すごーい」

普通の高校生が、ひとり暮らしできるマンションじゃ、ないよね。
井坂さんのおうちって、お金持ちなのかなぁ。

でも。

ものがあんまりない、っていうか。
井坂さんの趣味とか、生活とか、全然わからない感じがして。
ちょっと、寂しい感じがした。

「座れよ、るう」
「あ、うん」

アニキが、まるで自分がここに住んでいるみたいに、言う。
私は、アニキの隣のソファに、座った。
うわぁ。
ころん、って横になりたくなっちゃうくらい、気持ちいい。
井坂さんが、私たちの前に座る。

「何か、飲む?」
「いいよ、店で飲んできたんだし。それよか、るうに説明しようぜ」
「……言いにくいな」

井坂さんが、困ったように苦笑する。

「あ、あの、私ならいいですよ?井坂さんが言いにくいなら、理由なんて」
「いや、そうはいかないよ。るうちゃんにも、危険があるかもしれないし」
「……危険?」