「なぁ、るう」

朝。
高校に向かう途中で、アニキが話しかけてくる。

私、高野瑠海。
アニキや、友達からは、るぅ、って呼ばれてる。

アニキは、真(マコト)。
スポーツ大好き、いつも日焼けしてて、妹の私から見ても、ちょっと、かっこいい。

「なあに?」
「おまえさ、今日、なんか予定ある?」
「え?」

今日はちょうど、部活もないし、まっすぐ帰れる、けど。

「別に用事はないけど」
「そしたらさ、ちょっと、紹介したいやつがいるんだよ」
「紹介?」
「ああ、俺の友達なんだけどさ。そいつ、ちょっと変わってて」
「ふーん」
「ちょっと、人間不信っていうかさ。だから」
「えー?なんでそれで私に紹介するの?」
「だって、俺が信用できないやつに、紹介するわけにいかないだろ」
「ふーん」

ちょっと、ほんとは、うれしい。
アニキが私のこと、信頼してくれてること。

アニキはお人好しなところがあるから、きっと、その子のことをほっておけないんだと思う。

アニキに、そんな風に心配される女の子って、どんな子なのか、気になるし。
本音を言えば、ちょっとだけ、嫉妬しちゃうけど。

「いいよ。うちで待ってる?」
「いや、できたらあそこ、ヒーロスで待ち合せないか?」

ヒーロスって、駅の近くのバーガーショップ。
ギリシャバーガーとチーズバーガーが売りの、私もお気に入りの店。

「わかった。そしたら夕方ね、アニキ」

分かれ道。
軽く兄貴に手を振って、私は学校に向かって軽く駆け出した。