それから暫くの間、ぼんやりとして過ごした。

二限目、三限目の休み時間にも誰も来ず…悠介もアイツも、薄情者め。

隣のベッドの頼人は爆睡。思わず溜め息が出た。遂に昼休みのチャイムが鳴る。

廊下の足音。保健室の前でそれは止まり、がらりと扉が開かれる。誰かが近づいて来た気配。

きっと、悠介かアイツだ。そう思って身体を起こす。

…カーテンが開けられて、そこにいたのは──美月だった。


「眼留さん、初めまして。如月美月です」


にこり、と綺麗な笑みで挨拶をされた。

ふわふわした巻き髪を結い上げて、首元には頼人と同じ型のドクロのネックレスをしている。

顔は、誰よりも良く知っている美月と何も変わらない。

ただ…言い方に、棘が有りすぎる。

瞳の奥の冷たさに、私に対して好意的ではないのだろうな、と感じた。


「…初めまして、でいいのかな。愛瀬眼留です」

「本当に同じ顔なんですね、へー」


じろじろと物珍しそうに私を見る美月。明らかに敵意がある様子に、背筋が寒くなる。

隣のカーテンが勢い良く開けられた。


「…っせーんだよ、お前なにしに来た」


頼人は不機嫌そうにベッドサイドに座り、美月を睨みつける。

美月は、ふふ、と笑って、そんなに怒らなくたっていいじゃない、と笑う。


「あなたの大事な眼留さんを観察しに、ね」

「ふざけんな!」


ばん、と壁を殴りつける頼人に驚く。

美月は慣れた様子で、短気なんだから、と笑って見せる。

…なんだか、こっちの世界の美月は、怖い。心の奥に、なにかを秘めていそうな気がする。