数日後、とうとう来てしまった授業参観。


「日焼け止め塗らないと」


「肌の心配より、勝ち負けの心配してよっ」


「いいお天気ー」


3人は相変わらずで、親が来ていてもいつも通りだった。

花ちゃんは日焼け止めを塗りながらドッジボールのボールを蹴り飛ばした。

唯香ちゃんは今から始まるドッジボール、試合をとても心配している。何故なら桃子ちゃんがいるからだ。


おっとりしていて、反応も少し鈍い桃子ちゃんを見てみると、空を見上げていた。


「梓、そのシュシュ可愛いけど、作ったの?」


花ちゃんが私のシュシュを触って問いかけた。

いらなくなったハンカチで作ってみたんだ。赤の水玉模様のシュシュ。

今日の為にと持ってきて、親が来る時間につけようとポケットに入れておいた。


「ねぇ、梓。彼は来るの?」


『来ないよ』


「高校の先生だっけ。来れないよね」


来れないし、手紙も捨ててしまったから。

彼は知らないのだから来るはずがない。

桃子ちゃんが不思議そうに親のほうを見て呟くまでは。



「んーと…梓ちゃんの彼にとっても似た人がいるんだけどなぁ」



そんなわけないよ、だって知らないんだよ?

言ってもない、渡してもない、そんなわけない。

親達がいるほうをじっくり見ていると、ちょっと怒ったような顔をした彼がいた。


ドクンと心臓が鳴った。


彼に近寄ろうとした時、担任の先生が笛を吹いた。



「それでは、ドッジボールをします。はい、白組と赤組に分かれてください」



皆に腕を引っ張られていく時、振り返ってみた。


少し安心したように微笑んでいた。