しばらくして、彼は渋々頷いてくれた。


「学校も今日は休みにしてあるから…そうだな、今日は出かけよう」


今日の為にお仕事を休んでくれた彼には本当に申し訳ない。

私が通う小学校にはもう何日か前に彼が連絡してくれた。


「遊園地か?水族館、動物園。どこ行く?」


どこでもいいよ。だって、どこに行っても楽しいから。


薄ピンクのメモ帳にそう書くと、嬉しそうで、でも寂しそうな顔をした。


「じゃあ、今日は水族館。イルカショー見れるぞ」


大きく頷くと、彼は急いでホットケーキを食べて準備をすると言って部屋へと走って行った。

私も急いで食べて、彼から貰ったリュックの中にお財布と小さめのスケッチブックを入れた。


彼の部屋の前まで行くと、何やら探し物をしているのか、ガタガタという音がしている。


ノックをして入ってみると、彼は物をひっくり返したりして何かを探していた。


「おぉ、梓。待っててくれ。確か…あ、あった」


やっと探し物が見つかったようだ。見てみると水族館のチケットが2枚だった。


そういえば、貰ったって言ってたような。


「よし、行くぞ」


子供みたいに笑う彼の手を掴む。ぎゅっと握り返してくれた。


手を繋いで、私達は水族館へと向かった。