「次はー…お化け屋敷もいいなぁ」


コーヒーカップなど色々乗って、ポップコーンやお菓子を食べながら歩く。

お店に入ってぬいぐるみやキーホルダーを買ったりもした。

彼がふざけているところを撮ったり、私がお菓子を食べているところを撮られたり。


そんな楽しい時間はあっという間。夕方になり、最後は定番の観覧車。


「観覧車なんて久しぶりだなぁ。梓、夕日が綺麗だぞ」


そうだね、こんなじっくりと夕日を見るなんて久しぶり。


彼の嬉しそうな顔を見ながら、私はメモ帳をリュックに入れた。


「どうした?メモ帳、もうないのか?」


あるよ、たっくさん残ってるよ。

でもね、今だけはどうしても使いたくないの。




口を開けて、声を出そうとした。


言いたいことがある、どうしても今日中に。



「…ぉ……っ」



声が出ない、でも言いたい。悔しくてまた涙が溢れてくる。

伝えたいの。私のもう1人のお父さんに。


喉が熱くなって、涙も零れて。


「梓…」


ごめんね、ただ伝えたかったの。自分の声で。

今まで紙でしか伝えられなかったから、今日こそは自分の声でって思ったの。



「お父さん、って言ってくれたんだよな?」



泣きそうな顔で、私の頬を撫でる。


そうだよ。やっぱり、彼は私が声を出さなくても分かってくれる。

大きく頷いて、彼に抱きつく。


「ありがとう…ありが、とう」




彼の涙と私の涙が重なって落ちた。