電話を切ると、ニコッと笑って携帯を放り投げた。


「よし、飯食ったら…お出かけだ」


ポケットから取り出したのは、2枚のチケット。よく見てみると、遊園地のチケットだ。

それを私に渡すと、ごはんの準備を始めた。私はチケットをじっくりと見る。もうひとつだけ、私は彼に言いたいことがある。


今日こそ、言ってみるんだ。


「さぁ、早く食って行こう」


朝ごはんを食べて、急いで準備をする。今日はとても忙しい日だ。

泣き過ぎて目が痛くて擦っていると、ハンカチを水で濡らして優しく目の周りを拭いてくれた。


些細なことでも気付いてくれる。優しくしてくれる。


遊園地に着くまで、ずっと目の心配をしてくれたし、ずっと一緒だからなと何度も言ってくれた。


「まず、何から乗る?」


遊園地に着くと、彼がキョロキョロしながら聞いてきた。

私も周りを見てみると、家族で来ている人達が多くて思わずじっくりと見てしまった。


お父さんの腕を引っ張る少年。お母さんに楽しそうに話す少女。


私も両親がいた時は、あんな感じだったな。


「梓、ジェットコースター!乗ろう!」


目をキラキラさせて、私の手を引っ張る。



あの頃と変わらないことに気付いた。

だって、どこへ行くにも彼がいたんだもの。


お父さんに怒られながらついてきたよね。お母さんは笑いながら2人を見ていたんだっけ。


だから、あの頃からずっと私達は家族だった。



「並んでるなー…コーヒーカップ行く?」



大きく頷いてコーヒーカップのところへ。


こうやって、彼が道を作ってくれる。

迷わないようにと手を繋いでくれる。