死んだら天国だなんて、嘘だ



「分かっている、自覚している。彼女に死んでほしくなんかない、生きて幸せになってほしいって――“綺麗事さえも持ち出せるほど、愛していた”!

醜いんだ、俺。長い年月が経ちすぎて、腐っちまった……。墓参りに来てくれた彼女を何度、俺と同じにしようとしたことか」


「それで、その殺意を別の人間に?」


「物わかりいいね、君。そうだよ。最初は、憂さ晴らし。そうして気づく。誰かを殺すとき、俺は彼女のことを考えていないって」


愛することの苦しさを味わい続けた男にとっての唯一の安息(紛らわし)。


「彼女を殺さないために、他を殺した。彼女が俺に会いに来なくなってからも。憂さ晴らしした後でようやっと俺は、綺麗になれる。きっと彼女は今、幸せでやっているのだろう。

結婚して、子供もいて、幸せな家庭を築けていると、俺は誰かの死体を踏みつけながら初めて祝福できる……!

憂さ晴らし、憂さ晴らしだよ!心に余裕が出来るんだ、誰かを祝福出来る余裕が。彼女の幸せを憎みたくなんかない、だって俺は今でも――」