「彼女のもとへ、逝けるだろうか」
「ワタシの仕事は、あなたを追い出すだけです」
彼女がいないこの世界から――
「会いに行って謝ってくるよ」
「ええ。お気をつけて」
鋏が閉じる。
ちゃきん、と紙でも切ったかのような軽やかさを持って。
それほど呆気なかった。感慨に耽る間もないというのに。
「最期に『ありがとう』だなんて言わないで下さいよ……。暑苦しい」
ハンカチを出すほどの暑さ。目元を覆い、鼻をすする。
「死んだら天国に行くだなんて、嘘だ」
肉体、生命、霊魂。この三つが揃ってこそ人生が出来上がるのならば、散り散りとなったあの世で幸せや安らぎが感じ得るわけがない。物に幸せ云々を語れるものか。
死神の仕事は事務的なものでしかない。天国も地獄もない理屈も学んでいれば、ロマンチックなことなど霞となろうに。


