『きっと彼女は、俺が天国にいると思っている。信じている』
この世界に彼女がいない理由を誰よりも知っている冬夜は、むせび泣く。
膝をつき、背を丸め、叫んで喚いて、彼女の名を呼ぶ。
見苦しいことこの上ない。しかしてどうして、彼を罵倒出来ようか。
「愛していたからこそ、彼女は幸せになった。あなたが言ったことは、正しいんですよ」
死んでもなお、愛してもらえるほどに――
頬白の鋏が開き、冬夜の首に添えられる。
「その正しいことを間違っていると思ったのは、他でもないあなた自身。あなただけだ、その綺麗事(愛)に唾を吐いてしまったのは」
「ああ、そうだね……。腐っている――腐って“いたよ”」
顔を上げた冬夜は、笑っていた。
吹っ切れたように。もういいと、優しい死神に笑ってみせる。


