行き先を決める切符を持たせてはくれない。
「抗うよ。まだここには、彼女がいる」
無駄な抵抗でも、抗いは抗い。易々と“断ち切らせて”はくれないかと、頬白は鋏の切っ先を地面につける。
「まだ、“ここにいる”ですか」
オウム返しされた意味を冬夜は気付かないが。
「“人は死ぬ”。それは誰よりもあなたが知っているでしょうに」
なんて、遠回し。
だからこその、“優しさ”であった。
人は死ぬ。
そんな当たり前、言われずとも分かっているが――知らなければ、分からないのと同じなんだ。
「彼女……“いないの”?」
頷きも首を横に振ることもない頬白は、真っ直ぐに冬夜を見つめるだけだった。


