愛しているんだ。
「……。本当に、腐ってしまったんですね」
罵りにも近い言葉だが、冬夜が怒る気になれなかったのは自覚しているからではない。
「意外。そうして久々だ。俺のために泣いてくれる人は」
「気のせいです。暑苦しい夜なので、額の汗が目に入りました」
鼻をすすりながら言うことではないが、真顔を崩さない頬白は冬夜に近づく。
「愛しすぎたからこそ、天国になど――行きたくなかったんですか」
彼女は、“ここ”にいるのだから。
「そう、だね。最初から最悪だったよ、俺」
「いえ。“最愛”なだけですよ」
「……。逃げてくれない?君は殺したくない」
「そうして別の誰かを殺すのならば、逃げるわけにはいきません」


