北川の供述を聞いた波多と安岡は2件目の被害者の操作ファイルを漁っていた。

「羽田警部、まさかまさかそんなことがあるわけないですよね!?」

被害者女性の衣服、所持品、特に携帯。

「あったぞ安岡……『E』だ」

連続強姦致死事件の2件目、つまり北川が容疑を否認した事件の被害者の携帯にはメール作成画面にアルファベットの『E』の文字だけが残されていた。

「くそっ。『D』の次は『E』かよ」

「この1件だけでは断定できないですが、もしこれが殺人ピエロの模倣犯達に見られた共通項である『D』の文字に続く何かしらのメッセージであったなら……この事件はまだ終わってはいない?!」

憎悪と恐怖で震える安岡の額から滴り落ちた汗が机に落ちて跳ねた。

同時に羽田の携帯が鳴り響き、伝えられた内容に愕然とする上司の表情を見て、夢であって欲しかった現実を安岡は悟ったのであった。

「くそぅ。。。くそぉっ」

涙をボロボロと流しながら安岡は自らの手の脆弱さを恨んだ。皮膚が裂け出血しそうになったその手を、少ししわがれた固い手が包んでいた。

「んなことしてる暇は俺たちにゃあ用意されてねぇよ。行くぞ」

そう言って出ていく羽多の握りこぶしは強く強く固く握りしめられていた。

安岡はそんな背中を見て、涙と鼻水をぐしゃっとスーツで拭い取り、大きな背中を追いかけていくのだった。