「いたな顧客名簿の中に2人。もう1人はここを利用していないのか、メンバーズカードに登録していないのか。
ともあれ、その1人は聴取を受けているあのサラリーマンだ」
「波多警部!朗報です」
安岡は中富達に聞かれないように今さっき鑑識課から着きいたことを小声で伝える。
「3件の事件全てに共通することが判明しました。害者に付着していた容疑者の体液なのですが、そのどれもが不自然に死滅しているものが含まれていたとのことです」
「どういう意味だ?」
「避妊具は体液を留めるだけが役割ではなく、それと共に内側には精子を死滅させる為の薬剤が使われているそうです。これはどのメーカーによるものでも一緒で、避妊の失敗を避けるために重要な役割を果たしているそうです」
「……ってことはまさか」
ここにきて羽田も気づく。
同一犯としか思えない手口。
しかし被害者の体内からは異なる3人の体液が見つかる。
容疑者となった3人、また被害者となった3人、そのどれもに何の関係性も見当たらなかった。
それが思いもよらぬ形での、共通項が見つかった。
「100人のうちの馬鹿者が手にした情報ですね」
そう言って安岡はギラリとした目を向けた。
「最後に1つ確認したいのですが、こちらのホテルには防犯カメラなどは付いているのでしょうか?」
波多の言葉はそれ通りで"確認"以外の何物でもなかった。
「ええ、勿論。各部屋とエントランス、それから受付には防犯用の監視カメラが備え付けてあります」
「でしょうな。
では……その監視カメラの映像を無許可で観ている人物なんていやしませんかね?」
威圧するような波多の目に、中富は異常なほどの汗をかいていた。
その隣にいた中田が口を押さえていることに、安岡は気がついた。
その行為が示す意味も。
「中田さんでしたね。あなたもしかして監視カメラを観ていた人物に心至があるんじゃないですか?」
中田はびくっと肩を揺らして、震える瞳で店長である中富の方を見た。
「わ……私は知りません」
そう言って中田は顔をうつ向け、そのまま一言も喋らなくなった。
「中富さんはいかがですか?
例えばほら、今日はお休みの……」
「か、彼はよく働いていますよ。監視カメラは監視カメラ、何か事件がない限り見てはいけない規則を設けております。ねぇ、中田くん」
「……はい。そうです」
顔は俯いたまま目を逸らして中田がそう相槌をうった。
「とにかく、その方に会ってみないと分かることも分かりませんね。次の出勤の日わかりましたか?」
安岡の言葉に中田はもってきたシフト表を差し出した。
「2日後の水曜日ですね。ではまた、後ほどお伺いさせていただきます。今日は貴重な時間をありがとうございました」
中田はそう言ってくるりと踵を返した。
「捜査ご協力ありがとうございます。では失礼します」
安岡は深くお辞儀をして出ていく。
そんな2人を見送る中富と中田はただ呆然と立ち尽くしていたのだった。



