中富をはじめ中田、小林から話を聞いている波多と安岡。
事件に直接関わる証言は得られていなかった。
「……業務中にお時間を頂きありがとうございました。最後にここ一月ほどの顧客名簿を拝見させて頂いても宜しいでしょうか?」
「承知しました、少しお待ちくださいね」
中富は名簿の入っているのであろうダンボールのひとつを漁り始める。
「しかし綺麗に清掃が行き届いてるな。この手の場所はなんだか外装だけに凝っていて中はからっきしってのが多いように思っていたんだが」
羽田は隅まで掃除されているエントランスを見て、何気なくそう呟いた。
「確かにそうですね。僕のところのホテルなんかギラギラと外装はネオンで埋めつくしているのに、中は埃を被った装飾に、剥がれ掛けのメニューが当たり前で……」
内装を見ながらそう言った安岡であったが、その言葉の途中から波多の視線が自分に向いており、口元がにやけていることに気が付き口を閉じた。
「ほほう。安岡も男だもんなぁ?やることやってるじゃねぇか」
「しっ、仕事の最中ですよ!からかうのもいい加減にしてください!!まったく」
顔を真っ赤にして突っかかった安岡を見て、羽田はなんだか満足そうだ。
「よいしょっと、こちらが一月分の顧客名簿になりますね。とはいえ、メンバーズカード登録者様でない限りは名簿に載っていないので参考になるのかは疑問ですが……」
「ほぉ、メンバーズカード登録者のみでもこれだけの顧客がついておるのですか、繁盛していますね」
羽田はパラパラと顧客名簿をめくりながらそう言った。
「うちのメンバーズカードは他店舗でも使えますし、恐らく普通のホテルよりも還元率は高いですよ。もし宜しければ刑事さん達も是非」
そう言って中富はにこりと笑った。
3冊分の顧客名簿の2冊目に安岡が手をつけようとした時だった。安岡の携帯が鳴る。
「もしもし、安岡です。
あ、鑑識の関野さんですか。どうしました?はい、はい。
えっ?」
その時、安岡の表情が変わった。そして、安岡の憶測が現実味を帯びてきていることを伝えられた。



