金持ちくんと貧乏ちゃん




「流生くーん?どこ見てんの?」


「あ?……別に」


「あー!あの子!今年の入試トップの子だよねっ?」




首に回された腕を振り払って舌打ちをこぼした。


……何でそんな内部情報知ってんだよてめぇは。




「“理事長”から聞いたんだよねー」




……あんのクソジジィが。何でもかんでも輝に情報教えやがって!


もう一度舌打ちをこぼし、上を見上げると女はもうこっちを見てなかった。




「(……何でちょっと、残念がってんだよ…)」




ただほんのちょっと、遠目から見えただけなのに。


でも、ちょっとあの女に興味が沸いた。ジジィがお気に入りのあの女…。




「隣にいる子も可愛いよね」


「は?」




隣にいる女?……全然見てなかった。


輝を見てからあの女がいる教室を見た。窓は閉められて女の顔すら見えない。




「何なに?もしかして流生くん、あの子にホレちゃったのっ?」




ニヤついた顔で俺を見てくる輝に蹴りを入れ「バッカじゃねぇの」と返した。


惚れた?俺が?あの女に?




「(まさか……)」