「……は?」




女は一瞬凍りつき、輝を訝しげに見た。


輝はと言えば思い出そうとしているのか、首を傾げて女を見ている。


俺は専ら傍観者。




「いやぁ、俺さぁ…可愛い女の子は覚えてんだけど、お宅みたいにブサイクな子は覚えてないンだよね」


「なっ…!!」




にこやかに言う輝はパパッと腕を振り払うと、俺に笑顔を見せた。




「つーかさァ…」




輝はニヤリと広角を上げると、女たちに顔だけを向けた。




「アンタら、流生くんの行く手を堂々と塞いでるけどいいの?退学になっちゃうよ」




周りに群がっていた女たちは俺の顔を見るなり、慌てて各々の教室へと帰って行った。


チッ…めんどくせぇな…。


組んでいた腕を解きポケットに手を突っ込む。そしてふと上を見上げると、1人の女がこっちを見ていた。




「(あそこの教室は……確か1年だったな)」




そういえば、ジジィがなんか言ってたな。珍しくこの学園に美少女が入学して来るって。


その女は確か容姿端麗、成績優秀。だがスポーツだけは苦手みたいで体育の成績はあまり良くない…とか。




「(美少女…ねぇ…)」




でもその女、結構な貧乏人で学園に入れたのも奨学金のおかげだとか…。


ジジィがあの女だけ特別に奨学金を払ってこの学園に通わせる理由は一体なんだ?