玲菜は入学式を思い出すように、目を細めた。
「まあ、樺恋は関わりたくなかったからあんな態度だったのかもしれないけど」
「…あのときはもう、静かに過ごそうって気持ちでいっぱいいっぱいだったから…」
玲菜から渡されたプリントを私が落としちゃって、何言われるかすごいビクビクしてたんだよなぁ…。なんだか懐かしい。
「うん。それが…あたしにはよかったのかなぁ」
「どういうこと?」
「んー?…所詮みんなが見るあたしって“水城”っていう家柄だけだから」
そう悲しそうに話す玲菜。お金持ちの令嬢にも、悩みはあるんだなぁ…。
私は、家がただでさえ貧乏だから、どうやって切り詰めて行くかとか、妹たちの学費はどうするだとか…。毎日そんなことを考えている。

