ざわざわとざわめく教室を後ろで感じながら、目の前にいる先輩を見た。


どうして2年生の先輩が1年の教室なんかに……。




「悪いね。樺恋ちゃん、借りるね」


「えっ!?」




先輩はにこりと笑うと、私の腕を掴んで反論をする前に歩き出した。


ちょっ…どうなってるの!?


玲菜に助けを求めようと振り向いたけれど、頬をピンクに染めたまま笑顔で手を振っていたので諦めた。




「あのっ」


「ん?」




先輩は首だけを私に向けると、またにこりと笑った。


……その笑顔は破壊的ですね。




「どこ…行くんですか」




少し、警戒しながらそう聞くと先輩は面白おかしそうに笑った。


……よく、笑う人だな。




「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。捕って食うわけじゃないし」


「そんな事言われたって…」




名前しか知らないこの先輩を、疑うなと言う方が無理だ。