「でもあの子すっごく可愛いよね。写真見せてもらったけどさ。絶世の美女って感じで」


「……お前、俺よりいろいろ知ってるな」


「だって理事長が教えてくれるんだもん!」




だもん、じゃねぇよ。気色悪ィな。つか、ジジィも何情報教えてんだよ。


小さくため息をついて、踵を返した。




「あれ、どこ行くのー?」


「“部屋”戻んだよ。…ついでに、アイツの事聞いてくる」


「……あー、気になってるんだ?」


「…るせェ」




言葉ではそう言うけど、実際は少しだけ、気になってる。


何が気になるのか分かんねぇけど。




「じゃあ、俺。あの子と一緒に居る子のこと聞こうかなー」


「……はぁ?」




首だけ後ろに向け怪訝な顔を見れば、輝は相変わらずニコニコとして頭の後ろで腕を組んでいた。


何考えてんだこいつ…。




「だって流生くん、本気っしょ〜?そろそろ俺も本気になろうかと…」


「お前が?はっ、無理だろ。寝言は寝て言え」


「おっ?言ったな?絶対ギャフンと言わせてやるからな?」




また鼻で笑って「まぁ、せいぜい頑張れ」と言った。


自称フェミニストのこいつが1人の女に本気になれるのか?




「(つか、俺は別に本気じゃ……)」




“本気じゃない”と言い切れない。一度も話したこと無ければ会ったこともない。


今、少し顔が見えただけのこと。


そんな女に、俺が、惚れた?




「ま、流生くんも頑張ってよ」


「………るせぇっつの」




訳のわからない感情にイラつき、舌打ちをこぼした。





-流生 side end-