「む、無理!! ダメ! 出来ない!!」

「なんでだよ」

「なんでも!!」

「ちゃんとしたワケ言えよ」

「藍沢くんこそ!」

「会いたいから」

「漠然とし過ぎ! ダメ!! 帰る!!」



そんな押し問答を3回繰り返して、私は逃げるように音楽室から飛び出した。



「冗談じゃない…」


チラリと音楽室へと向かう扉を一瞥して裏門に向かおうとしたら、


「瀬那ぁーーー“わんっ!”」


頭上から新と犬の鳴き声が降ってきた。


「新、とその犬、さっきの…」

「そ。さっき拾ってきたヤツ。名前はロビンソン」

「あ、そう、なんだ…」


微妙にツッコミづらい名前に曖昧に頷いて歩き出そうとしたら、


「待って待って! 今日は俺が送るから!」

「…バイク?」

「当たり前!」


と、スーパーボールのように階段を下って、あっという間に駐輪場へと向かっていった。