「あれ? 模試終わったし、皆でどっか息抜きするんじゃなかった?」
「んー。パス。ちょっと先約」
「なんだとー。カレシか!」
「カレシとか興味ないし。ちょっと他校の人と待ち合わせ」
「ヌケガケだったら許さないぞ!」
「ハイハイ。さっきも興味ないって言ったじゃん」
キュ、とネクタイを締め直して一足先に教室を出る。
時間を気にせず勉強してほしい。という塾のモットーにより、この塾には入口以外に時計は設置されていない。
模試でケータイの電源を切っていたから、起動までの時間が惜しくて、急ぎ足で階段を下りて、入口の時計を確認する。
長針と短針が表す時間は4時3分前。
「やっば…」
昨日、電車の中で藍沢くんに言われたことを思い出す。
“4時までにあのドーナツ屋の前にいろ。そこに迎え行く”
…正直、まだあの連中を信じ切ってるとは言い難い。
だからこそ待ち合わせ時間前にはドーナツ屋に着いておきたいと思ったんだけど…。