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「藍沢くん、ホントどこ行くの?」
「あと少し」
……会話が成立してない。
“ちょっと着いてこい。”
と、ドーナツ屋を出て連れてこられた駅で、家とは逆方向行きの電車に揺られ早30分。
車窓を流れる景色をボーっと眺める彼に行き先を尋ねても、聞こえないのかわざとなのか、理解できてないのか、ずっとはぐらかされている。
ハア…、と本日何度目かもわからない溜息をついたとき、ふと彼が車窓から視線を外し、立ち上がった。
「次で降りるの?」
「ん、停車時間短けーから、もう立っとけ」
「うん…」
電車がホームに滑り込んで、扉が開く。
やっと行き先がわかる。
面倒事に巻き込まれない(かもしれない)。
そんなことを期待して、私は藍沢くんの後を追って改札口を抜けた。