レインリリー

すねる私に

「香奈ちゃんは笑ってればいいんだから」

と持っていたボールペンで私の頬をツンツンする。

「もう!それが子供扱いなんですよ~」

さらに不貞腐れふくれっ面の
私の顔ギリギリに
突然、雑誌が舞い込んできた!!!

「うわっっっっ」

ビックリして思わず後ろによろめく私を、すかさず大久保さんが支えてくれる。

「ほら、君達~お昼時でお客さん少ないからって無駄話ばかりダメだぞ~」

神出鬼没の今井さんだ。
土曜日は、いつもお昼を過ぎた3時頃からが客足のピークで
それまでの時間は比較的、
余裕があったから
ついつい喋ってしまう事が多かった。

「スイマセン。あの、これ何ですか?」

黄門様の印籠のように雑誌を掲げている今井さんは

「これ?この間、香奈ちゃんがモデルしてくれたフリーペーパー。
モデルのご褒美に、これあげるから彼氏にでも褒めてもらいな」

と、レジカウンターに2冊置いて

「午後から店長くるから、
ちゃんと挨拶しろよ」

そう忠告をして足早に去って行った。