「やだ。ケンカしないで。なんか私のせいで気まずくなっちゃったね・・・。ごめん。堅司、ありがと。仕事の事、考えてみる」


きっと、私なんかより傷ついているのにヘラヘラ笑って場を和まそうとする琴子の気遣いが、痛々しい。


「いい子じゃん」


このままじゃマズイと思ったのか
ニヤッと笑って琴子に頷いている堅司さんのおかげで何となく場が和んだ。






それなのに・・・


「あっ、香奈。俺、友達の引っ越しの手伝い頼まれてるから、ちょっと行って来るわ」

「聞いてないけど・・・」


また微妙な空気が狭いアパートの部屋に漂い、いい加減息苦しい。


「そうだっけ?お礼に飯奢ってくれるって言ってるから今日、晩飯いいや。お前も疲れただろ。たまには、ゆっくりしろよ」