レインリリー

「香奈、どした?」


さすがに私の様子がおかしいと
思ったのか
シャワーを浴びる用意をしていたのを
止め、
ソファに座る私の向いにあぐらをかき
私の左手を両手で包みこむ崇人。


その整った顔とは不釣合いな
ゴワゴワする手は
崇人がきちんと働いている社会人の
証のようで
私の好きな崇人ポイントの1つだ。


「ちゃんと聞くから。言ってみな」


心配そうに
少し眉をひそめて
私を見つめる眼差しが
とても優しくて。


不安で一杯で息苦しかった胸に
ジワリと暖かい何かが広がり
楽になっていく。



今なら・・・言える。



「…あのね。私、妊娠してるって…」