「私の心配するなら奥様の心配してなさいよ」
チラッと指輪に視線をやった。
「え?・・・・・お前目聡いな」
商売道具ですから。
「奥様が居るのに、異性である先生が私に深入りしたら仕事危ないわよ?」
沢野先生は同性だったから何言われても、仕事の危機になることはなかった。
でも、伊達先生は違う。
どんなに努力しても性別だけは変えられない。
「生徒はそんなこと考えなくていいんだ」
「何ソレ、現実をちゃんと見たら?」
漫画みたいなこと言ってるんじゃないわよ、良い大人が。
「増井の方が現実的だ」
ヘラヘラと笑う先生。
当たり前よ。
私は幼い時から現実を突き付けられてきたんだから。
今更現実から逃げろって方が難しい。
「私は身体を売るとか売らないの問題じゃないの」
私は男からお金を貰わないと生きていけない。
私の収入はそこしかないのだから。
「じゃあどういう問題だよ」
「生死の問題よ」


