ゆっくりと目を開けると、困った顔の樹の顔が映る。
「樹は留美に平気で報告出来る?」
「・・・・・・・・・・・降参」
両手を挙げ、お手上げのポーズを取る。
「あの時の噂は実習生達から逃れる為に俺が出した提案だった。正直迷惑だったんだ」
滝川先生も困ってたし、と付け足した。
「だが、滝川先生は増井にだけは本当のことを話したいと言われた」
窓の前に置かれている棚に腰を掛け、外を見つめ出した。
「俺は滝川先生の意見を尊重したいと思ってこの部屋で待ってたんだ」
「だったら何で!?」
何であの時先生は付き合っていると宣言したの?
「待っている間に、葵のことを考えたら自分は葵にとって邪魔なんじゃないかと思ってしまって」
だからあの時嘘をついたと言うの?
私を騙し続けていたの?
「葵の幸せを考えて俺は身を引いたんだ」
勝手に決めないでよ。
私の幸せは私が決めることでしょ?


