「な、に言って______」
増井の事が好きだと言った時には見られなかった顔。
きっと、留美が病気じゃなかったら
あの時留美が覚悟していなかったら
俺は告白した時にこの顔を見ていただろう。
「俺達、一度離婚してるんだ」
「う、そ・・・・・・。嘘よ。だって先週もデートしたじゃない」
「デートなんかしてないよ」
こんな話をしたって、留美は明日になれば忘れているのだろう。
「お願い、嘘って言って______」
「ごめん・・・・・・」
なんて言ったらいいのだろう。
ただ、ごめんと言い続けることしかできなかった。
「私、病気なんだよ?もう樹しかいないの」
腕に縋りついてきた。
初めて、留美の口から告げられた真実。
本人から聞くと、現実だとより一層思い知らされる。
「病気の先生に余命だって宣告されて、残されたのは何もない。なのに樹まで居なくなってしまうの?」
そんあ言い方されたら留美の腕を振り払えない。
「お願い。私の最期まで樹の時間を少し頂戴?」


