「智久しらない!?」
「誰それ」
「白石智久(しらいし ともひさ)よ!」
フルネームで言われても分かんないし。
「そんな人来てませんけど?」
言っている人物が一致しないが、多分この人だろう。
めんどうは嫌なのでとりあえず惚けておく。
「ったく、アイツどこ行ったのよ」
ブツブツ言いながら出て行った。
「もう行きましたよ。白石先輩」
「本当?てか、俺のこと知ってたんだ」
背凭れから顔を覗かせた。
「知らない」
「はっきり言うね~」
傷ついたとでも言うような顔をした。
嘘くさ。
「さっきの女がフルネームで呼んでた。それに、そのネクタイの色」
この学校は男女ともネクタイ。
そのネクタイが学年ごとに色分けされている。
こいつのネクタイの色が私の1つ上の青い色のネクタイをしているから先輩だと分かっただけ。


