「で、でも内容までは知らないでしょ」
なんで千紗が焦ってるのよ。
「雪国を訪れた男が、温泉町でひたむきに生きる女の諸相、そのゆらめき、定めない命の各瞬間を見つめる物語。女の一途な生き方に惹かれながらも、ゆきずりの愛以上の繋がりを持とうとしない男の冷たいほど澄んだ心の鏡に映された女の烈しい情熱が、哀しくも美しく描かれている作品」
一気に言い切った。
教科書なので当然全部は書かれておらず、一部しか載っていない。
その代わりにエピソードが書かれてありそれを丸々言っただけ。
2人は同時に薫子の顔を見た。
「大正解」
ニッコリ笑う薫子とは真逆に血の気が引いていく2人。
「あんたテスト受けに来なさいよ。高得点叩き出せるわよ」
「そうそう。再テストなんて点数が半減すんのよ?」
それぐらい知ってるわよ。
「めんどくさいし」
1学期に1回テスト受けに来たら上等よ。
「じゃあ質問に答えて。テスト範囲は一通りできるの?」
「出来ない。だって教科書読んでないし」
それに、私は暗記しか出来ないんだから。


