「そう言ったんなって」
仕方ないものは仕方がない。
「そうツーンとすんなって。昔はよく俺の演奏聴いててくれたのに」
「昔はね。それに、湊は私の知ってる曲を演奏してくれたでしょ?」
ニヤッと笑ってみた。
「そりゃそうか」
そして、取って置きの笑顔を見せた。
「だからそういうのいいって」
「そういうのって?」
素でやってるのか。
てか、慣れ?
「もういいよ。湊は変ったね」
「どの辺が?」
「臨機応変な所?」
「葵はまだまだだね」
この感じ。
この優しい笑顔。
今は知らないけど、他の女には見せないこの笑顔。
昔からずっと落ち着く。
湊のこの笑顔を見ると、心が安らぐ。


