【短編】ユキと最後のKiss



それからは他愛もない話をしつつ、穏やかな帰り道を過ごした。

家について鍵を開けようと、彼女の手を離す。

すると、後ろから抱き締められた。


「今日はどうしたの? いつもより甘えんぼさんに見えるんだけど」

「んーんー、なんでもない」

「本当に?」


問い詰めると、彼女は黙りこむ。

暫しの沈黙が流れるが、すぐにそれは破られた。


「私のこと、好き?」


確かめるようなその言葉に、首をかしげる。

何が彼女をそうしているのか、分からなかった。

でも、安心させるようと、回された彼女の手を離して彼女の方を向いて抱き締めた。


「もちろん、大好きだよ」


耳元でそっと囁けば、彼女は安心したように微笑む。


「私もだーいすき」