【短編】ユキと最後のKiss



「あんな言葉、聞かせてごめんね。僕がもっと早く、食堂から出ようと言えばよかったのに」

「なんで謝るの。悪くないよ、悪くない。それより、あの人達、べたべた触ってた」

「嗚呼、君の事ずっと触ってたよね。嫌だったろうに、やっぱり、僕が早く出ようって言うべき……」

「違うの!」


彼女が僕の言葉を遮るように否定するから、その続きは言えなかった。

代わりに、彼女が言葉を紡ぐ。


「私じゃなくって、あの、えっと……」


言いづらそうに俯きつつもチラチラと僕の方を見る。


「僕のこと?」


自分を指さして言えば、こくこくと彼女は頷く。


「あー、確かに触られてたかも」

「触られてたかもじゃなくて、べたべた触られてたのー!」


むーっと頬を膨らませて怒る彼女がおかしくて吹き出してしまう。


「笑わないでよー。私は見てて嫌だったんだから」


悲しそうにくっついてくる彼女がすごく愛しいと思った。