「あんな言葉、聞かせてごめんね。僕がもっと早く、食堂から出ようと言えばよかったのに」
「なんで謝るの。悪くないよ、悪くない。それより、あの人達、べたべた触ってた」
「嗚呼、君の事ずっと触ってたよね。嫌だったろうに、やっぱり、僕が早く出ようって言うべき……」
「違うの!」
彼女が僕の言葉を遮るように否定するから、その続きは言えなかった。
代わりに、彼女が言葉を紡ぐ。
「私じゃなくって、あの、えっと……」
言いづらそうに俯きつつもチラチラと僕の方を見る。
「僕のこと?」
自分を指さして言えば、こくこくと彼女は頷く。
「あー、確かに触られてたかも」
「触られてたかもじゃなくて、べたべた触られてたのー!」
むーっと頬を膨らませて怒る彼女がおかしくて吹き出してしまう。
「笑わないでよー。私は見てて嫌だったんだから」
悲しそうにくっついてくる彼女がすごく愛しいと思った。


