「ごめんね。何も言えなくて」


何もできない自分が悔しくて、謝るしか能のない自分に腹が立つ。

だけど、彼女は気にしない様子で首を振った。


「さっきも言ったじゃない。謝らないで。何も言えなくても君は私の味方でいてくれるでしょ?」


優しく微笑んだ彼女は『それにね』と言葉を続ける。


「私は、ずっとお母様に要らない存在だって言われてきた。それについては否定しない。

あたしも要らない存在だって自分で思ってる」

「そんなっ……」


否定しようとすれば、彼女は僕の唇に手を当てて止める。


「ちょっと、待って」


にこりと悪戯そうに微笑む彼女はそれすらも綺麗だ。


「でもね、それでもね、君は私のことを必要としてくれた。私を”必要”な価値ある存在として見てくれた。

そんな君がいたから。だから、まだ死にたいなんて一度も思ったことないんだよ」