未だに汚い言葉で貶すやつらに痛みと悲しみと怒りと絶望と、色んな感情が溢れだして苦しくなる。

こんな言葉を目の前の彼女に聞かせてはいけない。

それだけを思って、立ち上がった。


「そろそろ行こうか」

「う、うん」


右手で食器の乗ったお盆を持って、左手で彼女の手を引いて、その場を立ち去る。

後ろから何か言っている声が聞こえるけど、もう聞こえない。

いや、聞いてはならない。

無意識に左手に力が入るけど、僕は気付かない。

俯いている彼女が泣きそうな顔をしている事も、心配そうに握り返してくれた事も。