「ずっと、ずっと……僕はみんなに申し訳なくて。僕のせいなのに、代償もすべてを請け負って幼い頃から諦めていたトワが悲しくて。 それでも猫のせいだって心のどこかで思ってる自分が、すごく嫌だったんだ」

「そんな!あの鼠はっ……」

「どんなものでも、ウソはウソだよ」


あれは猫を想った、優しい嘘だった……。


……廉次さん……。
廉次さんも、そんな想いを抱えていたんだ。




そう言う廉次さんの顔からは、いつもの華がない。
目にかかりそうな程長い前髪で、横顔が隠れて、よく見えない。


ジッと見つめていると、不意に廉次さんは顔を上げた。




「だから、真子ちゃん。僕はね―――
何があっても、トワだけは幸せになってもらいたいんだ」



廉次さんは、すごくすごく優しい顔をしていた。



ねえ、トワ?

あたし、こうして十二支だったみんなと一緒にいてすごくよくわかるの。


トワはひとりじゃない。

きっと、トワが小さな頃から、みんながトワを気にして心配して。
愛してくれていたんじゃないかな。


胸の中がジワリとあたたかくなって、あたしはまたトワの姿を追った。


カフェテラスにひとり。

空色の髪が、12月の風に揺れている。

寒いの苦手なはずなのに、セーターにマフラーをグルグル巻きにして。
ぼんやりと夜空を眺めてる。


誰を思い描いているかなんて

聞かなくてもわかるよ?



だってほら。

トワのまわり


キラキラと光の粒が舞ってるもの。