廉次さんのお店は、とても賑やかだった。


すぐそこに迫ったクリスマス。
その雰囲気に合わせた店内。
まるで宝石箱をひっくり返したような、そんな煌びやかさがあった。



みんなの楽しそうな笑い声。
あたしはそれを少し離れた場所で聞いていた。


と、そこへオレンジのガレットを持った総司朗先生がやって来た。
先生は、迷わずにあたしの隣に腰を落とす。


「……両方手に入れるとはな、お前を少し見くびっていたらしい」


先生はそう言って、コーヒーに口をつけた。


あたしはそんな先生をチラリと見上げ、手元のココアを見つめた。


「あの、ありがとうございました」

「何がだ」


興味なさそうにそう言って、先生はコトリとカップを置く。


「色々、助けてくださって……。先生があの時、あたしにああ言ってくれたから、あたしは一歩踏み出すことが出来ました。だから、ありがとうございます」


小さくペコリと頭を下げる。
すると、それを目の端でとらえていた先生が、クスッと笑った気がした。


「お礼を言うなら、俺たちだ。
お前の想いは、全員わかってるからな」

「……え?」


キョトンとすると、先生はお店の外に視線を外した。


「――で?いいのか、あれをほっといて」

「あ、えっと……」


それは、カフェテラスにいるトワの姿。