これでよかったんだもん。
あの猫の願いは、きっと叶ったんだもん。
なにも、なにも悲しい事なんてない。
ない、のに……。
見上げた星空が、あまりに綺麗だから。
最期に見せた猫の、瞳のように綺麗だから。
だから、涙が出そうで……。
「…っ、く……っ」
なんでかな。
すごくすごく大切なものが、手の中からこぼれ落ちてしまったような。
二度と手に入らないものを手放してしまったような、そんな気持ちになった。
堰をきったように流れる涙は、もうどうする事も出来なくて。
拭いても拭いても、止まらない。
俯きそうになった、その時。
背中にぬくもりを感じ。
誰かにギュっと抱きすくめられた。
「……真子」
「っ、トワぁ、猫……猫がぁ」
「うん」
「猫が、いなくなっちゃったよぉ」
「……うん」
「うぅ……っ、うわぁぁぁん」
子供のように泣き続けるあたしを、トワは何も言わず、ただ抱きしめてくれていた。
それが消えてしまった猫の冷たさを思い出させて。
余計にトワはあったかいなぁと強く思った。
ヒラヒラと舞い落ちるその光の花びらは
千年分もの猫の想い。
それは
いつまでもいつまでも
あたし達に優しく降り続いていた。



