すると、郁くんの頬が見る見るうちに赤く染まっていく。


「ありがとう。あの時はトワを。今日はあたしを心配してくれたんでしょ?郁くん、優しいね」

「え、あのっ、その……僕は別に」


火が出そうな程真っ赤になった郁くん。
郁くんだけは、昔からトワと仲が良かったって言ってたし。
きっと、トワの事大好きなんだな……。

でも、トワと郁くんってどんな会話するのかな。
トワの後について歩く郁くんを想像して、なんだか可笑しくなってしまった。

絶対かわいいよね。


クスクスと肩を揺らすと、ぼんやりとした郁くんが、ポツリとつぶやいた。


「…………かわいい……」

「え?なに?」


よく聞こえなかった。なんて言ったのかな?
郁くんの目を覗き込むと、バッと飛び退いた郁くん。


……え?


「あっ、いえ、あの、別になんでもありませんっ!か、可愛いなんて言ってませんっ……あ。」

そう言って固まった郁くん。


「あ、あの、僕……さようならっ」

「あ、郁くんっ?」



行っちゃった……。
物凄い勢いで走り去った郁くんの背中は、あっという間に見えなくなってしまった。



……かわいい?

可愛いのは、郁くんだと思う。


秋の夕暮。
ビードロの空には一番星。

冷たい風は、短いスカートを揺らし
それぞれの想いを乗せて、空へと舞いあがる。