ふわり

頬に触れたのは、今度こそ人のぬくもり。
愛おしそうに、優しく触れたトワは、息のかかる距離であたしを見つめ、そして少し笑った。


「やっぱり、抱きしめられるよりこっちの方がいい」

「……な、なんの事?」


答える代りに、腕にキュッと力を込めたトワ。

その顔が近づいて、そして
唇と唇が…………。



……って!!!
だ、だ、だ……



「だめーーーーーっ!」



……はっ!


「え、ど、どうしたのっ」

「なになにっ、な、なんか出たっ?」


思わず大声で叫んでしまったあたし。

そんなあたしの声に驚いて、ガバッと起き上がったクラスメイト達。


ひえええ!ど、どうしよう……。


パチ!と電気がついて……もうダメだと思った。


「真子?どうしたの、顔真っ赤だよ?」

「へ?あ……」


……いない……。

さっきまでトワがいたはずの、お隣には誰も居なくて。
ほんの少しの甘ったるい残り香と、胸のドキドキだけが、確かに彼がそこにいた事を証明していた。



そうして眠れないまま、夜が明けて。


――朝。


朝食をとる為に広間に行くと、すぐに空色の髪を見つけた。


トクンって胸が鳴く。
だって、あたしよりも先に、トワが気付いてくれたから。

たくさんの友達に混じって、顔を上げたトワ。
窓から差し込む朝日よりも眩しい、その笑顔に切ないくらい嬉しくなった。