あれは……。


「トワっ!」


皆が指差していた、その先。
たしかにこの部屋から一部屋だけ、下の階の部屋を見ることが出来た。

そこに、あたし達と同じように窓から身を乗り出した、トワがいたのだ。


こちらに気付いた男子が、大騒ぎしてる。
その中で、窓枠に腕を乗せてひとり興味なさそうにしてるのが、トワだ。


旅先で、トワの姿を見つけ、心臓がトクンと鼓動を速くした。


トワの背中越しに、「おーい」なんて手を振る他の男子達。
窓から体を離したトワが、一瞬だけこっちを見た。


あっ


パッと頬が熱くなり、見ていた事が無性に恥ずかしくなる。

でも……。

トワはまるであたしの事なんて目に入らないみたいに、そのまま部屋の中へ消えてしまった。

見えなかった、だけだよね。
少しだけへこんでる自分に気付いて、慌てて首を振った。


「ありゃ、行っちゃった。つまんなーい」

「ほんと、藍原くんってミステリアスだよね~」

「転校してきたときは、天使かと思っちゃった!」


クラスメイトの会話に、何故か落ち着かない気分になる。
あたしはこっそりと窓際から離れた。

と、その時。