なぜかため息まじりに言われて、ポカンとしてしまう。


「どういう意味?」


そんなあたしを見て、スッと目を細めると、小首を傾げて綺麗な唇を持ち上げた。

その表情に胸がギュってなる。



「……。次、移動なんでしょ。急がないとほんとに遅れるよ」

「あ、うん。先に行ってて……」



一瞬不思議そうな顔をしたトワ。
でもあたしが動こうとしないのを見て、「行ってるよ」って言うと、今度こそ背を向けて、校舎へと歩き出した。

その背中が見えなくなると、一気に体から力が抜けた。

崩れるように、ぺたんとその場に座り込む。


もう、色々限界……。



「っ、な、なんてキスするのよぉ……」



たまらずそうつぶやいて、火が出そうな程熱い頬を、両手でバフッと抑えた。

心臓が、バクバクと忙しく血液を送り出す。
そのせいで酸欠だ。

うまく、息出来ない。



「トワのばかぁ……」




けしかけてるのは、どっち?


とうぶんおさまりそうにない熱を、あたしはどうする事も出来ずに、結局移動教室に間に合わなかった。