約束とクローバー

理想と現実の違いを痛切した私は
すっかり気分を落として、盛り上がる放課後の教室を後にした。

私があの輪の中に入り込む事は、
酷く難しい事だと感じたから。

「悠里!」

帰ろうと足を進める私に、後ろから声が掛かった。
其れが誰の声か、直ぐわかる。
特徴的なハスキーボイス――徳だ。

「どうかした? 徳」
「いや、帰んの?」
「うん。」
「盛り上がってるとこなのに?」
「うん、ごめん。
私、ああいう雰囲気の中に入るのって得意じゃないんだ。」

力無く笑うと、徳は「ふーん」と短い返事をして何かを考えるかのように顎に指を当てた。
暫くして、口を開いた徳からは驚きの言葉が掛かった。

「じゃあ、あたしも帰ろっかな。
途中まで一緒に帰ろうよ。鞄取ってくる」

「えっ?!」

驚愕の声を上げる私に対して、「待ってて」と笑って教室へ戻っていく徳を呆然と見詰める私に、徳の誘いを肯定する暇も否定する暇もなかった。

数分もない内に教室から鞄を持って飛び出してきた徳と、私は一緒に帰る事になった。

――徳は凄い。

私は其れを確かに思い知らされるのだった。