凌祐を置いて、その場を去ろうとした時、後ろから鼻で笑う声がした。

振り向くと、凌祐がバカにする様な口調で言ったのだった。

「一人で帰るからなんて、断らなくていいよ。そもそも俺は、美亜を迎えに来たわけじゃない。自惚れるな」

はっきりと言われて、返す言葉を失う。

すると、圭祐が呆れた様に口を挟んできた。

「おい、おい。二人とも素直になれよ。じゃあ、兄貴は何しにここへ来たんだよ?」

「ショウに行けって頼まれたからだよ」

面倒臭そうに凌祐は答えている。

どうやらショウとは、あのホストみたいな人の事らしい。

やっぱり、言われて来ただけなのだ。

「圭祐が待ってるなら、一応行っておこうと思っただけだ。美亜、一人で帰るなら、とっとと帰れよ。おやすみ」

あしらう様に、手を振っている。

そこまで言うか!?

いくら何でも酷すぎる。

腹立たしさも頂点になり、その腹いせに凌祐の左手を掴むと、指輪を引っこ抜いたのだった。

「な、何をするんだ!?」

驚く凌祐に、私は言ってのけたのだった。

「これは、私が預かっとく。これで、お互いを縛りつける物の一つがなくなったのだから、半分自由よ?だからいい加減、こんな偽装結婚はやめちゃいましょう」