あたしの脳が全て溶ける前に、郁実の方からキスを終えた。




「そろそろ生徒が登校してくるよな、人が来る前にこれ捨ててくる」




「……うん」




美術室を出ていく背中に向かって、急いで声を投げかけた。




「郁実っ!このあと、どこかで待ち合わせする?ゆっくり話したいし…」




「ん…今日は俺も学校あるし…その後は、用事があってムリかな」




そうだった、忙しいって言ってたっけ。




しかも、郁実はもう違う学校に通ってるんだった…。




今さらながらのボケに、自分で驚く。




すっかり、1年前の気分に戻ってた。




郁実がいた頃のように、また…一緒に授業を受けられるんだと、そんな錯覚を覚える。




だけど郁実にはもう、今の生活があるんだよね。




「そんな顔すんなよ。なんのために渡したと思ってんの?」




郁実があたしを指差す。




「……え?」




「もう忘れた?部屋の合鍵、それで今日ウチに来れば?」















そっ、そうだ!!




あたし、合鍵を……もらったんだ。




郁実にとって、特別な存在である証だよね。




しかも、今日なんて…そんな、突然!?




あたし、まだ心の準備ができてないっ。




色々と考えていたら、郁実がフッと鼻で笑った。




「ひとり暮らしの男の部屋に来るってことは、それなりの覚悟があるって思っても…いい?」




ドキッ!




「やっ……そんな、あたし…そんなつもりは……」




さっきの甘いキスを通り越して、もっとすごいことしちゃうってこと!?




そっ、そっ、そんなこと、




あたしには……ムリっ。